有限体上の線形空間 Fqn は集合の包含関係 ⊆ を用いて、束 (Lattice) にも射影幾何 PG(n−1,q) にも考えることができます。
この束と PG(n−1,q) の関係について、特に束における結び (join) と交わり (meet) が PG(n−1,q) におけるどの操作に当たるのでしょうか。
考えてみれば難しくないのですが、自分がこれまで確認したどの書籍にも載っていませんでした。
個人的にはこの理解は非常に大事なポイントであると考えているため、説明していきます。
F23 の束と PG(2,2)
V1 と V2 の交わり (meet)
2 つの線形空間 V1,V2 の交わり V1∧V2 は、射影幾何においても言葉通りで 2 つのオブジェクトの交わりを表します。
また、この演算は集合における積 ∩ と同じになります。
V1 と V2 の結び (join)
2 つの線形空間 V1,V2 の結び V1∨V2 は、射影幾何において 2 つのオブジェクトを結ぶ直線を通る点全体、つまり V1 と V2 が交わっていないのであれば cone V1V2 になります。
線形空間の関係を示す 2 つの表現について、それらの関係を見ていきました。
これによって、線形空間に関する見え方のバリエーションが増えていきます。
線形空間の部分空間の束は modular になります。つまり、
rk(V1)+rk(V2)=rk(V1∧V2)+rk(V1∨V2)
を満たします。
これを用いることによって、射影幾何 PG(n,q) でのオブジェクトの交わりの次元がわかりやすくなります。
また、基底の話になると点と直線の関係が決められている射影幾何が便利になったりします。
有限体上の線形空間 Fqn を扱ってる方は束と射影幾何とも仲良くなると幸せになると思います。
自分もまだ入門段階であるためこれから精進していきます。
PG(n,q) 上において、次元がそれぞれ k,n−k の射影空間を Πk,Πn−k とする。
Πk と Πn−k は必ず交差する。
解説
束が modular であることから、
rk(Πk∧Πn−k)=rk(Πk)+rk(Πn−k)−rk(Πk∨Πn−k)=k+n−k−rk(Πk∨Πn−k)≥k+n−k−n=0. 0 次元射影空間は点にあたるため、少なくとも点で交差します。
PG(n,q) 上において、次元がそれぞれ k,n−1 の射影空間を Πk,Πn−1 とする。
Πk⊆Πn−1 のとき、Πk∩Πn−1 の次元は?
解説
射影空間の集合の積は、線形空間の束の交わり (meet) と同じであり、射影空間になります。
Πk と Πn−1 の結び (join) は PG(n,q) そのものになり、
rk(Πk∧Πn−1)=rk(Πk)+rk(Πn−1)−rk(Πk∨Πn−1)=k+n−1−n=k−1. つまり、射影空間における次元は k−1 になります。